栄養素の話

栄養素の話

栄養と栄養素

人が成長し、健康を維持していくために、必要な成分を摂り入れることを「栄養」といい、個々に含まれる栄養成分を「栄養素」といいます。栄養素は、大きく5種類に分類されます。

栄養素の主な働き

たんぱく質

【働きや特徴】

たんぱく質は、1g当たり4kcalのエネルギーとなり、体内で筋肉や臓器等を構成する最も重要な成分であり、酵素、ホルモン、免疫抗体、遺伝物質等となります。
たんぱく質はアミノ酸で構成され、アミノ酸の中には体内で合成できるものと、体内で十分な量を合成できず、食品から摂らなければならない必須アミノ酸があります。アミノ酸は、植物性たんぱく質(穀類や野菜類等)、動物性たんぱく質等、様々な食品から摂ることが大切です。

【多く含む食品】

肉、魚、卵、乳、大豆等に多く含まれます。

【過剰】

長期にわたり摂りすぎると、腎臓に負担がかかります。

【不足】

発育不良、病気に対する抵抗力の低下、貧血等を起こします。

脂質

【働きや特徴】

脂質は、細胞膜や、ホルモン、血液の成分となります。1g当たり9kcalのエネルギーとなり、余りは体脂肪として、エネルギーの蓄積や体温維持等の役割があります。
脂肪を合成する脂肪酸の中には体内では合成できないために食品から摂らなければならない必須脂肪酸があります。多くの脂質は中性脂肪(脂肪酸+グリセリン)として存在します。

【多く含む食品】

肉の脂、バター、鶏皮、青背魚、うなぎ、植物油、ナッツ類、ごま

【過剰】

体脂肪が蓄積して肥満になったり、血液中の脂質が蓄積して脂質異常症等の生活習慣病の原因となります。

【不足】

エネルギー不足になり、脂溶性ビタミンの吸収が阻害されたりします。

水分

  • 栄養素ではありませんが、体内の物質輸送、化学変化に必要で、重要な成分です。
  • 成人では体重の50~60%を占め、10%失うと健康を保てず、20%失えば死に至ります。

※1kcalとは?:1ℓの水を1℃(14.5℃から15.5℃へ)上昇させるために要するエネルギー量

炭水化物

【働きや特徴】

炭水化物は、糖質(穀類、いも類等に多く含まれる栄養成分)と食物繊維(ペクチン、マンナン、セルロース等)に分類されます。糖質は、消化吸収されて血中でブドウ糖となり、この糖が身体や脳の活動に欠かせないエネルギーになります。糖質1g当たり4kcalで、栄養素の中で一番早くエネルギーに変えることができ、その代謝にはビタミンB群が必要となるので、一緒に摂ることが望まれます。一方、食物繊維はエネルギーにはなりませんが、満腹感を与えたり、便秘を予防したり、大腸の環境を整える等の働きがあります。

【多く含む食品】

米や小麦などの穀物、果物、砂糖、芋類

【過剰】

エネルギーが使われないと、グリコーゲンや中性脂肪になり体内に蓄積し肥満になります。

【不足】

エネルギー不足で体力や体重、免疫力が低下します。

ビタミン

【働きや特徴】

ビタミンは、13種類あり、微量で体内代謝を調節する働きがあります。

【多く含む食品】

ビタミンの種類によって含まれる食品は様々ですが、野菜や果物に多く含まれています。
ビタミンB群は豚肉や穀物、ビタミンAはレバーやうなぎ等にも含まれています。

【過不足】

ビタミンは、摂取量の不足や過剰で、特有の症状が出る場合があります。

  • <水溶性ビタミン(水に溶けやすい性質)>B1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、B12、ビオチン、パントテン酸、C
    摂り過ぎても尿中に排泄されます。水に溶けやすいので、調理での損失が大きくなります。
  • <脂溶性ビタミン(脂に溶けやすい性質)>A、D、E、K
    摂り過ぎは過剰症を起こすことがあります。油との相性がよいので、油を使った料理では吸収率がアップします。
成分 主なはたらき 豊富に含む食品



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ビタミンA 皮膚や粘膜の正常保持・視覚の正常化・成長等に関与。植物性食品に含まれる色素であるカロテノイドは体内でビタミンAに変化。
【不足】皮膚や粘膜の乾燥・夜盲症・成長障害・胎児の奇形など
レチノール(主に動物性):レバー、うなぎ、あなご、卵黄等
カロテノイド(主に植物性):緑黄色野菜
ビタミンD カルシウムやリンなどのミネラルの代謝や骨の代謝などに関係。
【不足】子どものくる病(骨格の異常)、成人の骨軟化症など
魚介類(あん肝、いかなご、いわし、うなぎ、さけ等)、きのこ類(きくらげ、干ししいたけ等)
ビタミンE 細胞膜や脂質に豊富に存在し、それ自体が酸化されることによって、抗酸化作用を示す(細胞の老化予防)。 植物油、胚芽、種実類(ゴマ、くるみ、ピーナッツ等)
ビタミンK 正常な血液凝固、骨の形成に関与 納豆、海藻類(のり、わかめ等)、緑黄色野菜



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ビタミンB1 糖質代謝に関与 胚芽、豆類(大豆、インゲン豆、えんどう豆)、豚肉、うなぎ
ビタミンB2 ほとんどの栄養素の代謝に関与。成長促進・皮膚や粘膜の保護
【不足】成長障害・脂漏性皮膚炎・口内炎など
レバー、心臓、卵、胚芽、納豆、豆類(ひよこ豆、緑豆)
ナイアシン 皮膚や粘膜の健康維持を助ける かつお、まぐろ、レバー、ピーナッツ、きのこ類
ビタミンB6 タンパク質、脂質、炭水化物代謝に関与。
【不足】皮膚炎、動脈硬化性血管障害、食欲不振など
にんにく、種実類(ピスタチオ、ひまわりの種、ごま、ピーナッツ)鶏肉、レバー、青背魚
ビタミンB12 赤血球の形成を助ける
【不足】悪性貧血・神経障害など
貝類(赤貝、かき、はまぐり、しじみ、ほっき貝)、青背魚、レバー
葉酸 赤血球の形成を助ける、胎児の正常な発育に寄与する 葉野菜(春菊、ほうれん草、モロヘイヤなど)、枝豆、オクラ、ブロッコリー、レバー、うに
パントテン酸 皮膚や粘膜の健康維持を助ける レバー、たらこ、いわし、納豆、きのこ類
ビタミンC 皮膚や粘膜の健康維持を助ける、抗酸化作用 果物、野菜

無機質(ミネラル)

【働きや特徴】

無機質(ミネラル)は必須のものは16種類あり、身体の調子を正常に整える働きがあります。大部分は骨・歯等の硬組織にありますが、筋肉、臓器等の軟組織や体液中にも微量含まれています。筋肉や神経の調整、血液凝固作用、体液の酸・アルカリの反応(ただし、食品が血液の㏗に直接関与することはありません)の調整など、生命維持に欠かせない微量栄養素です。

【多く含む食品】

野菜や肉、魚、乳製品、海藻類等広く食品に含まれ、多く含む食品はミネラルの種類によって異なります。

【過不足】

無機質(ミネラル)は、摂取量の不足や過剰で、特有の症状が出る場合があります。

  • ナトリウム・・・食塩として摂りすぎると、高血圧等の生活習慣病の原因
  • カルシウム・・・不足すると、骨粗しょう症 鉄不足すると、貧血になるおそれがあります
成分 主なはたらき 豊富に含む食品





カリウム 筋肉や心筋の働きを正常に保つ、ナトリウムによる血圧上昇を抑制 果物、野菜、豆類
カルシウム 骨や歯の形成
【不足】子どものくる病(骨格の異常)、骨粗しょう症
牛乳、乳製品、小魚、葉野菜、大豆製品、ごま
マグネシウム 骨や歯の形成、体内酵素の正常な働きとエネルギー産生を助ける、血液循環を正常に保つ 海藻類(ひじき、昆布、わかめ、のり)、ごま、アーモンド、ココア、桜えび、貝類
リン エネルギー代謝・脂質代謝に関与、骨格を形成 チーズ、するめ、しらすぼし、豆類、小麦粉





赤血球を作る
【不足】貧血
貝類(あさり、しじみ、はまぐり)、レバー、卵黄、ひじき、葉野菜
亜鉛 味覚を正常に保つ、皮膚や粘膜の健康維持を助ける、たんぱく質・核酸の代謝に関与 かき、あわび、レバー、牛肉、卵、ごま、ココア、抹茶
赤血球の形成を助ける、体内酵素の正常な働きと骨の形成を助ける レバー、ほたるいか、桜えび、大豆製品、種実類(ごま、カシューナッツ、甘栗)