京の食文化

京の食文化

京都には、平安京以来千二百有余年の歴史と伝統、海から離れた内陸の盆地という環境の中で育まれた、京都ならではの食文化が形作られています。

1 自然・環境から見た食

2 文化からみた食

(1)時代変遷

平安遷都以来、公家、武家、神官、僧侶の文化的な関わりが京都人の生活に影響を与え、時代と共に様々な料理が発達してきました。

平安時代 神事の料理 神饌(神社や神棚に供える供物)
公家の料理 大響料理(料理を形式化し、色、形、盛付けの美しさを重視した日本料理の原型)
宮中の料理 式包丁、有職料理
鎌倉時代 寺院の料理 精進料理(仏教の教義に従って、動物性食品と五葷(にんにく、ネギなどの薬味)を禁じ、植物性食品と中国伝来の調理法を組み合わせ、日本独自の工夫をほどこした)
室町時代 武家の料理 本膳料理(本膳(飯、汁、菜、香のもののついた膳)を中心に膳を重ねていく形式の食事)
安土・桃山時代 茶道の料理 懐石料理(料理は素朴で簡潔なものをよしとし、一汁三菜が基本。亭主の手料理、給仕によるものを原則とする。魚鳥も用い、簡素であっても温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、心を込めた料理を順に出すという料理)
江戸時代 町衆の料理 会席料理(江戸の料理、酒宴の料理)
中国風料理 卓袱料理(長崎名物でオランダ料理と唐料理を折衷し、円卓を囲んで和風、南蛮風、国風の料理が大皿で出される)
普茶料理(宇治の黄檗宗万福寺に中国僧隠元禅師が伝えた精進料理)

(2)五色、五法、五感、五味

五色、五法、五感、五味のバランスの上に日本料理が作られています。

3 京都人の食事

(1)ハレとケ

京都は、平安遷都以来、長い歴史の中で公家文化や町衆文化が重層して、特有の都文化を醸成してきたため、町中の祭事、行事も数多くあります。人々の暮らしのけじめとして、また、町衆の心意気の表れとして、ハレの日に食べる食事と素朴な日常(ケ)の食事があります。

季節 行事 ハレ(行事食、祭事食) ケ(日常食)
彼岸 ぼたもち、ばらずし 畑菜と厚揚げの炊いたん
たけのこと生節の炊いたん
田植え 鯛そうめん、赤飯、ぼたもち、ばらずし
水無月
(6月30日)
水無月(くずやういろうに小豆の乗った三角形の和菓子) 豆ごはん
夏野菜の煮付けやごまあえ
なすやきゅうりのどぼ漬け(ぬか漬け)
祇園祭 はも料理
三尺ささげとなすのごまあえ、あらめ炊き、かぼちゃの煮物、ずいきのなます、湯葉のつゆ
彼岸 おはぎ、ばらずし、いなりずし、栗おこわ、もち すぐきのごまあえ、しば漬け、なすの炊いたん
秋祭 さばずし、栗おこわ、かしわのすき焼き
正月
(1月15日)
丸餅の白みそ雑煮、野菜の炊き合せ、たたきごぼう、ごまめの炒り煮、黒豆煮 すぐき漬け、千枚漬け、京菜の漬物、塩こんぶ
大根とお揚げの煮付け
京菜の炊いたん
小豆粥
鏡開き 鏡もちと水菜入りすまし汁
薮入り かしわのすき焼き、ぜんざい
節分 焼きいわし、炒り大豆、巻きずし
初午 畑菜のからしあえ

(2)おきまり料理

京都では、月のうちの「何の日に何を食べる」というおきまり料理が定着していました。これは、からだに必要な栄養素を安価な食品で定期的に摂取するだけでなく、今日は何日かを再確認し、気持ちを引き締め、生活にメリハリをつける役割もありました。合理性を踏まえた生活の知恵といえます。

(3)京のおばんざい

京都では、ふだん家庭で作るおかずのことを「おばんざい」とか「おまわり」等と言います。「おばんざい」は、良いおだしをベースに、種類が豊富で栄養価の高い京野菜と豆腐等の大豆製品や乾物、ひと塩もの等を組み合わせています。毎日食べても飽きのこない、京都の家庭の味として、今も作り続けられています。

▼おばんざいの作り方は、レシピ集へ
>> 「京のおばんざい」のレシピ一覧