睡眠と健康

1 睡眠と健康の関係

睡眠は、こども、成人、高齢者の健康増進・維持に不可欠な休養活動です。良い睡眠は、脳・心血管、代謝、内分泌、免疫、認知機能、精神的な健康増進・維持に重要であり、睡眠が悪化することで、睡眠に関連した様々な疾患の発症リスクが増加し、寿命が短縮するリスクが高まると報告されています。

また、良い睡眠は、眠気や疲労が原因の事故や怪我のリスク低減にも役立ちます。さらに睡眠は、日中活動で生じた心身の疲労を回復する機能とともに、成長や記憶(学習)の定着・強化など環境への適応能力を向上させる機能を備えており、睡眠の悪化は成長や適応能力の向上も損なうことにつながります。

適切な睡眠の目安として、朝目が覚めたときにしっかりと休まった感覚(休養感)があることが重要です。

 

2 世代別の睡眠

(1)成人

〇 1日に6時間以上を目安として睡眠時間を確保する

適正な睡眠時間は個人差がありますが、成人においては、おおよそ6時間~8時間が適正な睡眠時間と考えられ、1日の睡眠時間が少なくとも6時間以上確保できるよう努めることが推奨されています。

〇 生活習慣や睡眠環境等を見直し、睡眠休養感を高める

睡眠には1日の活動で蓄積した疲労やストレスから回復させる重要な役割があります。睡眠休養感(睡眠で休養が取れている感覚)を向上させることが重要です。
睡眠休養感を低下させる要因として、ストレス、就寝前の夕食や夜食、朝食抜きなどの食習慣、運動不足、糖尿病・高血圧・がん・うつ病などの慢性疾患を有することなどがあり、生活習慣の見直しが大切です。また、寝る前のリラクゼーションや寝室の快適さ、嗜好品の取り方などの睡眠環境も睡眠休養感に影響を及ぼします。

〇 病気が潜んでいる可能性にも注意

睡眠の不調(入眠困難や途中覚醒)、睡眠休養感の低下がある場合は、生活習慣等の改善を図ることが重要ですが、長く続く場合、睡眠障害等の病気が潜んでいる可能性もあり注意が必要です。

 

(2)高齢者

〇 床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保する

65歳以上の高齢世代では、床上時間が約8時間以上の場合に総死亡率が増加すると報告されています。床上時間の目安は、1週間の平均睡眠時間(実際に眠っている時間)+30分程度です。床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保するようにしましょう。

〇 日中の長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす

昼寝は、夜間の良眠を妨げる原因になりうるため、日中の長時間の昼寝は避けるようにしましよう。日中は活動的に過ごし、昼と夜(活動と休息・睡眠)のメリハリをつけることが大切です。

 

(3)こども

〇 小学生は9~12時間、中学・高校生は8~10時間を参考に睡眠時間を確保する

適切な睡眠時間を確保することは、こどもの心身の健康にとって重要です。夜更かしなどの生活習慣に関連する睡眠不足を防止する観点から、小学生は9~12時間、中学・高校生は8~10時間を参考に睡眠時間を確保することが推奨されています。

〇 朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして夜更かしの習慣化を避ける

日光を浴びること、朝食を摂ることは体内時計の調節に役立ち、睡眠、覚醒リズムが整います。また運動は、良質な睡眠の確保につながります。規則正しい生活習慣を保つことが重要です。

 

3 睡眠による休養感を高めるポイント

(1)日中の運動・身体活動を増やす

日中に体を動かし、適度な疲労を感じることで寝付きが促され、中途覚醒が減り、睡眠の質が高まります。

(2)しっかり朝食を摂り、就寝直前の夜食を控える

朝食を欠食すると、体内時計の後退(遅寝・遅起き化)に伴う寝つきの悪化を促し、睡眠不足を生じやすくなります。また、就寝前の夜食や間食は、朝食の欠食と同様に体内時計を後退させ、翌朝の睡眠休養感や睡眠の質を低下させると報告されています。

(3)就寝前にリラックス

就寝前にリラックスすることは寝付きをよくするために効果的です。脳の興奮を鎮めるため、自分に合ったリラックス法を持つことが大切です。なかなか寝れないときは無理に眠ろうとせず、一度、寝床を出て暗い場所でリラックスをして過ごし、眠気を感じたら寝床に戻りましょう。

【リラックス法の例】

   ・静かな音楽を聴く  ・腹式呼吸

   ・アロマ       ・静かに行うヨガ

(4)カフェインの摂取量は1日400mgを超えないようにし、夕方以降はカフェインを控える

カフェインには覚醒作用があり、寝つきの悪化や中途覚醒の増加、眠りの質を低下させる可能性があります。1日のうち、どの時点であっても400mgを超えるカフェインを摂取することは、睡眠に影響を与える可能性があります。

※ カフェイン400mgの目安
・ドリップコーヒー:コーヒーカップ4杯分(700cc)
・市販のペットボトルコーヒー:1.5本分(750cc)

 

(5)晩酌は控えめにし、寝酒はしない

アルコールは一時的に寝つきを促進し、睡眠前半では深い睡眠を増加させますが、睡眠後半の眠りの質は悪化します。また、アルコールを連用することで依存や耐性を形成し、離脱作用によりアルコールを飲まないとよく眠れない状態に至る可能性があります。寝つきを改善させるための飲酒(寝酒)、大量のアルコール摂取(深酒)や毎日の飲酒は推奨されません。

(6)喫煙をしない

たばこに含まれるニコチンは覚醒作用があり、睡眠前の喫煙は寝つきの悪化、中途覚醒の増加等をもたらし、眠りを妨げます。睡眠以外の健康のためにも喫煙は控えましょう。

 

4 良質な睡眠のための環境づくり

寝るときの環境で重要なことは『光・温度・音』です。良い睡眠のために、寝室の環境を見直しましょう。

(1)光

朝目覚めたら部屋に朝日を取り入れ、日中はできるだけ日光を浴びることで、体内時計が調節され、入眠しやすくなります。また、夜は寝室にスマートフォンやタブレット等を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠につながります。

(2)温度

室内は快適と感じられる適度な室温を心がけましょう。就寝の約1~2時間前に入浴し、身体を温めてから寝床に入ると入眠しやすくなります。

(3)音

騒音は眠りを妨げるのでできるだけ静かな環境で眠りましょう。

 

(参考)

・健康づくりのための睡眠ガイド2023

・e-健康づくりネット(https://e-kennet.mhlw.go.jp/